FOSS4G Advent Calendar 2011に参加したので久々にブログ更新(26日担当)。ここは個人のブログですが、現在、自分が「仕事で」開発を担当しているWebGIS「eコミマップ」を紹介したいと思います。(このエントリは「です」「ます」調。)

1. eコミマップの概要
背景とか理念とか書き出すと文章長くなって時間も無いので省略しますが、eコミマップは防災科研が開発しているオープンソースのWebGISです。FOSS4Gのプログラム群を基盤に機能を拡張して作っています(一番基盤となっているのがGeoserverで、PostGISとかOpenLayersとか、いろいろ使っています)。ライセンスはGPLで無償公開しています。なので、特に申請なども必要なく、商業利用も可能です。ダウンロードはこちらから。

特徴は、OGCのオープンスタンダードで公開されている地理空間情報の流通の仕組み(WMSやGoogleのKMLなど)に基づきデータを取得して重ねて表示することができ、そして、それらを下敷きに自分で情報を登録して地図が作成して印刷出力ができ、作った地図をさらにOGCオープンスタンダードの方式で二次配信できます。

開発して3年ちょっとで、これまで開発した機能を数えたことはありませんが、ざっと以下のような機能があります。

・外部の地図データ(WMS、KML、TMS系など)表示機能
・情報登録機能(写真やドキュメントの張り付けも可能)、登録情報管理機能
・住所によるジオコーディングを使った情報登録機能
・IDとパスワードによるレイヤとマップの管理機能
・印刷機能(PDF出力機能)
・空間および属性検索機能、空間分析機能(一部のみ)
・メモ描画機能
・携帯電話、スマートフォンによる閲覧および情報登録機能

マップのみのウェブサイトですと、多目的に使いづらいので、CMSやグループウェアとの連携を念頭に置いています。防災科研ではeコミグループウェアというPHPベースのグループウェアを開発しており、グループウェアのユーザ権限の連携が可能です。(ちなみに、DrupalやWordpressと連携するためのAPIおよびパーツの開発を今年度行っています。)

防災科研なので、これらの機能を使って、防災マップの作成や災害対応に活用してもらいたいと思っています。ただ、このシステムは用途はかなり汎用的なものですので、環境とか防犯とかいろいろなことに使えます。

2. 導入事例
平時の防災活動といしては防災マップコンテストを開催し、そこでeコミマップを使いました。2010年度のコンテストの作品は公開しています。eコミグループウェアからeコミマップを呼び出して使っています。

東日本大震災では情報集約および恊働を呼びかけるために構築したALL311において、各機関が公開している地図のマッシュアップに使用しました。日本地理学会が津波被災マップの公開のためにeコミマップを使いました

また、宮城県社会福祉協議会がeコミを使ってボランティアセンターのサイトを運営し、ボラセン運営のために一部非公開で地図を活用しています。詳しくは私が災害情報学会で発表したスライドをご覧ください。

さらに、東日本大震災で被災した自治体(陸前高田市と大槌町)については、罹災証明書の発行を支援しました。また、釜石市ではがれきの撤去管理支援にも活用されました。これらについては、地理情報システム学会で発表したスライドをご覧ください。

こんなこともあって、eコミマップは地理情報システム学会の学会賞(ソフトウェア部門)を受賞しました。また、宮城県社会福祉協議会からは表彰を受けました

3. 導入のためには?
ソフトウェアは無償なので、あとは以下のことを考える必要があるでしょう。

a. サーバ環境
Redhat系で動作確認しています。なので、CentOSが入っているさくらのVPSで動くと思います(人柱募集)。推奨はメモリ4GB以上なので、月々4000円のコースでしょうか。なお、eコミマップは中に複数のサイトを構築し、外部の複数のサイトと連携できるので、それほどたくさん環境構築する必要はないことが特徴です。

b. セットアップやメンテナンス
セットアップはマニュアルがありますが、バージョンアップなども考えると、Linuxがわかるシステム管理者を置いてサーバ管理ができる必要があるでしょう。ただ、地図管理画面が充実しているので、インストール後の運用はGISが分かっているサイト管理者がいれば、問題はないです。実際のユーザは管理画面を使わずにeコミマップを使用できるようにしています。

c. 背景となる地図は?
例えば、基盤地図情報25000WMS配信サービスが使えるでしょう。歴史に興味が有る方は、農環研さんの迅速測図も使用できますね。負荷が心配ですが...。さらに、現在開発中(年明け公開予定)なのですが、Googleマップを背景に使えるようにします。ただし、地図タイルのリクエスト数の多さによる課金の心配がありますし、印刷制限があります。他には、OpenStreetMapのタイル方式にも対応させる予定です。噂によると、来年度は国土地理院が電子国土の地図画像をほぼ標準的なタイル形式で公開するらしいので、それにも対応させたいと思っています。

4. 今後の開発予定は?
年明け公開準備しているのが、Shapeファイルのアップロードおよびダウロード機能があります。また、これまでは緯度経度の投影だったのですが、Googleマップで使用されているメルカトルに対応させます。それに伴い、すでに言及したようにGoogleマップとOpenStreetMapを背景地図に使用できるようになります。

別システムなのですが、Javaで動くデスクトップアプリケーション「eコミマップ印刷アプリ」を1月末までに公開する予定です。eコミマップから出力された専用ファイルを読み込みませることで、地図上に画像やメモ、吹き出しや矢印などが自由に配置できるようにします。

来年春にはeコミマップと他のウェブシステムを連携するためのAPI機能を実装して公開する予定です。先ほどDrupalとの連携について触れましたが、ユーザ認証やレイヤの管理や更新などAPIで行えるようにし、他のウェブシステムが連携しやすくします。また、iframeによる地図埋め込み機能もできるので、他のサイトにおいてブログパーツのようにeコミマップを使用できるようにします。

来年夏ころかもしれませんが、オフラインでeコミマップが使用できるする機能を公開予定です。Live DVDみたいなものが配布してハンズオンができればいいなあと思っていますが・・・。

5. 将来的なこと
eコミマップを広く普及させることはあまり興味が有りませんが、このオープンソースであることをうまく社会で活かして欲しいと考えています。最近の動きですと、NPOのDoChubuさんでは、eコミマップを使って防災マップなど地図作製の支援を事業として開始しました。朝日新聞にも紹介されています

長期的な展望はusuyu氏にお任せするとします。広い視野で展望できる時間的・精神的な余裕が全くありませんので。そうそう、国際展開のための多言語対応は必要ですね。

6. 目指すべきは地図データを互いに利用できる環境「分散相互運用環境」の実現

GoogleマップやGoogle Earthに代表されるように、GISは徐々に浸透してきていますが、様々な地図を簡単に重ね合わせたり、マッシュアップさせられる環境にはほど遠い状況です。その理由は、地図データが他の地図システムで活用しやすい方法で公開されていないからです。理想は、地図データを持つ機関が、責任を持って地図データを標準的な方式でインターネットで公開して、利用者はそれらをうまく重ね合わせてマッシュアップできる環境です。このことを「分散相互運用環境」といいます。技術的にはできていますが、社会の仕組みとして、これができていません。

東日本大震災では、被災後の国と民間の航空写真をWMSで公開し、ITS協会が公開していた通行実績マップのKMLをマッシュアップさせ、さらにゼンリン住宅地図や炊き出しマップや避難所マップ、津波被害エリアマップ(by 日本地理学会)などの地図データを重ね合わせることができる分散相互運用環境をeコミマップで実現させ、被災地で実際にボランティアセンターなどがeコミマップを活用して、災害対応に活用していました。現実には、このようなGISを活用できる環境は簡単に実現できないのが現状です。

Googleも被災後の衛星画像と通行実績マップをマッシュアップさせていましたが、これはGoogleのエンジニアがやらないといけない作業でした。このようなことは、本来はユーザ側で動的にできる必要があります。また、そのマッシュアップした地図の上にユーザが自分の情報を登録できる環境はありませんでした。我々はそれができるようにする必要があるのです。

7. さいごに
結局、勢いで背景とか理念の一部を最後に書いてしまいましたが、eコミマップは分散相互運用環境を実現するために生まれた地図ツールなのですね。永遠に開発途中のシステムです。もし、よければ使ってやってください。あと、開発者は随時募集中ですので、興味のある方はご連絡ください。
以前から、ずっとブログは更新頻度が低いわけですが、ブログの当面の休止を発表します。Twitterは既に休止してます。はてなのブログも休止します。Facebookは未公開でちょぼちょぼ更新予定。Flickrは写真のアップはたまにするかもしれません。
日本国際地図学会の定期大会(国士舘大学世田谷キャンパス)のシンポジウム「震災とジオメディア」で発表することになりました。 日時は8月10日の14時50分からです。ちなみに、非会員は2000円かかるらしいです。

職場での取り組みの発表となります。ALL311についてとなっていますが、防災科研の地図を使った情報支援全般について、紹介することになると思います。おそらく、パネルディスカッションになると思うのですが、シンポジウムの発表者として参加したことがないので、ちょっと緊張します。できればスライドは公開します。

さて、8月3日から6日は南紀白浜〜伊勢志摩あたりを車で巡る旅行にいってきます。行程は以下の通りです。


より大きな地図で 2011年8月3〜6日の旅程 を表示
東日本大震災前に投稿していた論文が応用測量論文集で公開されたので紹介。以前にもブログに書いたけど、地図をインターネット上に流通させる国際標準方式であるWMSで公開したことは、参加型マッピング(OpenStreetMap)にとって有効だったことを示した内容である。

ハイチ地震の際は、幾何補正済みの衛星画像をそれぞれの機関が、責任を持ってデータをWMSで公開したわけだが、それによって、データが即座に利用可能となり、必要なデータを必要な地理的範囲で動的に利用できることになった。そして、マッピングに参加した人は、マッピングに必要な衛星画像を切り替えながらマッピングを行い、迅速な基盤地図整備が実現したのである。

このように、それぞれの機関が地理空間情報を国際標準のような形式でデータ流通させて、互いに利用し合える環境を「分散相互運用環境」というのだが、それが役に立ったはじめての事例といえる。(この言葉、なかなか浸透しないので、某コマーシャルの低燃費→TNPのように、分散相互運用環境をBSUとでも名付けようか。)

田口仁,臼田裕一郎,長坂俊成,(2011)「大規模自然災害の対応支援のためのリモートセンシングデータ提供方法の一提案: 2010年ハイチ地震を事例として」 応用測量論文集, Vol. 22, pp. 53-63.
※ 論文のPDFは連絡いただければお渡しします。
そして、東日本大震災においても、このようはことは実現した。ハイチ地震のOpenStreetMapの事例は、外側からの支援であったが、今回は、現場の被災地の災害対応において役に立ったのである。そのためには、分散相互運用方式+WebGISという2つの要素が重要だったと私は認識している。この点については文章が長くなるし、私自身もまだ整理しきれていないので、今後しっかりとまとめていきたいと考えている。
東日本大震災の余震が続いているが、地震の揺れの情報を知る3つの方法を紹介しようと思う。3つとは、「人間系」、「観測系」、「予測系」である。

・人間系-「P2P地震情報

インターネットに接続されたパソコンに常駐するソフトウェア。地震を感知したら、感知情報を発信する。地震が発生して揺れを感知したら、感知情報を送ることで、全国各地でこのソフトウェアを使っている人たちの情報が集約されて、それが地図上に表現される。感知情報が多いところは信頼度が「高」となる。

感知情報の集約であるため、実際の揺れの大きさを知ることはできない。後に示す2つの方法は「震度」として情報を得ることができる。しかし、感知情報の多い地域は、揺れが大きかったことを知る手助けにはなるだろう。なお、東日本大震災の際は、東北太平洋側沿岸部は揺れが強すぎて感知情報を送る余裕がなかったらしく、その地域だけは感知情報が無かったらしい(知り合いの方から感知情報のキャプチャを見せていただいた)。

後で示す、緊急地震速報アプリによる速報とほぼ同時に感知情報が出ることもあり、やや遠目の地震で自分の場所が揺れる可能性があることを知る手段としては役に立つのではないだろうか。なお、TwitterにP2P地震速報のアカウントがある。

・観測系-「(独)防災科学技術研究所 強震モニタ
今度は観測系。防災科研は全国に地震の観測網を整備しており、気象庁の緊急地震速報の観測点にもなっているが、観測点の揺れの大きさをリアルタイムで地図上で表示するページがある。

こちらのページをクリックすると、日本地図が右側にある。これをクリックすると、ポップアップで強震モニタが表示される。デフォルトでは、「最大加速度」となっているので、これを「リアルタイム震度」にすると、いつも見慣れた「震度」の表現に変えることができるのだ。5秒ごとに更新されるので、脇に表示しておけば、リアルタイムで全国で観測された揺れの情報を得ることができる。

地震の規模が大きすぎると、そもそも観測地点の電気や通信回線が途絶する場合があり、観測が途切れる可能性も考えられる。ちなみに、私は防災科研の人間だが地震観測関係の部門ではないため、その辺の事情は詳しくは知らない。

・予測系-「緊急地震速報サービス The Last 10-Second
最後に予測系。気象庁の緊急地震速報を個人パソコンで提供してくれる有料ソフト。ウェザーニュース会員(月額315円)が利用可能である。自分はこれのためだけに月々300円払っている。これも、P2P地震情報と同様にパソコンに常駐させるソフトウェアである。居住地を選び、ポップアップによる速報を表示する条件として、最大深度、推定震度、マグニチュードの3種類をOR条件で設定することができる。

IP接続なので、どこまで早く速報が届いているのかは不明である。また、速報が「はずれ」ることもあるが、ある程度信頼できるところから「震度」の予測を知る手段として有効だろう。


では、上記3つの手段をうまく組み合わせて何ができるか。今までに無かった情報が得られるわけではないのdが、緊急地震速報が出て、大きな震度予測が出たものの、はずれた例が何度かあったが、その際は地震感知情報と強震モニタで、実際の揺れの状況を即座に把握し、過大評価されていたのだと知ることができた。

きのう、そこそこの地震があり、運よく3つの情報のキャプチャがとれたので紹介したい(下図)。左上がP2P地震情報の画面。北関東で感知情報が多く、信頼度が高いことがわかる。そして、右の画面が強震モニタで、実際に揺れが観測されていることがよくわかる。左下は、緊急地震速報アプリで、最大震度4が予測されて、自分の場所は震度1が予測されている。

jishincap.jpgTwitterのタイムラインも有効な手段であり、揺れたというTLが一気に並ぶが、それだけだと、どこが揺れたのかという情報はわからない。なお、Twitterには地震関係のいろいろなBotが存在しているので、それでリストを作ってフォーするのも良いかもしれない。

かなり久々なブログ更新です。ご無沙汰してます。Nilab氏がリブログしていたTweetにあるTechcrunch(本家の方)記事をみて、まさに欲しいサービスだったので、実際に試してみた。このエントリはそのレポートである。

TechCrunch: Flicksquare Sends Your Foursquare Check-In Photos To Flickr http://ow.ly/1aD62Dless than a minute ago via Twitter for iPhone



Flicksquareというサービスで、何が出来るかというと、Foursquareの新しい機能である写真投稿機能をFlickrへ投稿するというものである。FoursquareとFlickrのアカウントがあれば、Flicksquareのサイト経由で、両方のサービスを順番に認証していくことで、利用可能になる。サイトは手順に沿って認証するようなユーザインターフェースなので、非常に分かりやすい。

認証を完了させて、iPhoneアプリのFoursquareを起動し、Checkinして写真をアップロード。実際に行った写真はこちら。投稿した後に、Flickrに投稿された写真はこちら。というわけで、Foursquareで投稿した写真がFlickrへアップできている。ただし、残念なことにFlickrに位置情報が付いていないのである。Flickrのページの右には「Add this photo to your map!」となっており、位置情報が付いていないことがわかる。「Additional info」に、撮影された場所は入っているのだが、緯度経度は入っていないということである。今後、Flickrにもジオタグが緯度経度として自動的に登録して欲しいと思う。

さて、Usuyu氏から以下のようなコメントをいただいた。

@tagchan instagram→4sq→flickrもうまくいきそう? RT @tagchan: おお。fouraquare経由で写真がflickrへ投稿できた。less than a minute ago via TweetMe for iPhone


InstagramにはFoursquareとFlickrへ自動投稿する機能があるため、あまり使わないかもしれないが、InstagramのiPhoneアプリからFlickrへの投稿はオフにしたままで、Foursquareだけに投稿するケースを試してみた。投稿したInstagramの写真はこちら。次にFoursquareに投稿された写真がこちら。そして、Flickrまで送られた写真がこちら。やはり、先ほどと同様に、位置情報はFlickrには付いていないことがわかる。

まだスタートしたばかりのサービスなので、今後のアップデートに注目したい。

【追記 2011.1.8】
4sqの位置情報が、Flickrのジオタグに反映されるようになったことを確認した(その写真はこちら)。これはうれしい。

ハイチ大地震の際に、Google Earthでの公開をはじめ、地図画像の国際標準形式であるWMS(Web Map Service)で配信されたことを以前のエントリで紹介したが、WMS配信された後の動向を追いつつ、今回の事例をまとめてみたい。

前回のエントリで紹介しているが、参加型マッピングの世界的プロジェクトである、OpenStreetMap(OSM)ではこれを使ったマッピングが盛んに行われた。GeoeyeやDigitalGlobeだけでなく、他の機関もWMSで航空写真や衛星画像を公開した。一応、私の所属する防災科学技術研究所でもJAXAの協力により、ALOS(陸域観測衛星「だいち」)の緊急観測画像をWMSで公開し、微力ながらOSMに貢献した(リンクプレスリリースPDF)。

時間が経過するにつれて、WMS配信されるデータが増えて、それに伴ってハイチの地図が充実し、被害の把握が進んだ。この作成されたマップは、OSMにおいてデータとして公開され、また、WMSによって配信された。OpenStreetMap WikiProject Haitiを見ると、作成された地図や被害マップが活用された事例が多数紹介されている。

さらに注目すべきことに、様々なマップおよびマッピングサービスの下敷きに活用されただけでなく、データそのものを利用したマッシュアップサービスが登場した。経路探索サービス(リンク)、現場の要望をマッピングするサービス(リンク)、携帯端末でのデータの利用(リンク)などが登場した。このように、衛星画像を使って、被害把握から現場対応支援までが迅速かつシームレスに繋がったのである。

上記のように今回の一連のハイチでの事例を振り返ってみると、個人的には2つのポイントがあったと考えている。それは、1)WMSにようなデータが利活用システム側で動的に利用できる方式(分散相互運用環境)が役に立ったこと、2)参加型マッピングがマップ版クラウドソーシングだったこと、の2点である。

1)については、WMS配信されなければ、そもそもOSMによって被災地の迅速なマッピングが実現しなかった。さらに、マッピングされたデータは、WMS配信やデータとして公開されたことにより、現場対応支援までが迅速かつシームレスに実現した。従って、公開するデータが利活用システム側で動的に利用できる方式に対応することの有効性は明らかである。2)については、ウェブのトレンドになりつつあるクラウドソーシングそのものといえよう。

そして、これら2つのポイントは、同時に実現したことで効果が出たといえる。1)の相互運用方式によって衛星画像がWMS配信されることで、利用システム側でデータが動的に利用できるようになったことで、2)のクラウドソーシングとして参加型マッピングが容易に実現したのである。なお、GISドメインとしては、Googchildが2007年に、Volunteered Geographic Informationと名づけた(リンク)。

このようなアプローチの課題として、マッピングのデータの精度がある。ただし、精度の問題は、マッピングを行っている多くの人が問題意識を持っている点であり、バグをチェックするシステム(リンク)や、第三者が管理する仕組が登場した(リンク)。データそのものを公開したり、相互運用で配信することで、データに直接アクセスできるため、精度改善のための仕組もユーザ側で自律的に発案されるのである。ただし、精度の種類のうち、位置の精度については、ユーザサイドに起因するエラーではないため、改善するのは難しい。衛星画像の提供側の課題である。提供する際は位置精度が高いことが要求される。

というわけでまとめると、タイトルで示したように、今回の事例はマップ版クラウドソーシングが実現したわけで、その下支えとしてWMSのような動的にデータが利活用できる相互運用方式が役に立ったといえ、大規模災害時の情報収集手段として、この組み合わせによって、民間会社や専門家が作成するマップの網羅性や迅速性を超えるマップができ、さらに、新たな利活用が生まれるポテンシャルがあることが明らかになったといえる。利用ポリシーをどうするのかという点は課題だが、今後も大規模な災害が発生した際は、データの所有者はWMSで提供することを強く希望したい。

ただし、このやりかたは世界のどこでも有効だろうか?ハイチのような地図もほとんど無い場所だったから今回の参加型マッピングが有効だったが、もう少し発展した国で役に立つアプローチだろうか?地震の規模と被害の規模によるが、この点は考えておく必要があるだろう。

(本エントリを書くにあたり、臼田裕一郎氏(@usuyu)が収集した情報を多数利用している。本エントリは、臼田氏との共著という位置付けとしたい。)

昨日のエントリで、Google Earthでハイチの被災地を撮影した商用の高解像度衛星画像が公開されていることを紹介したが、WMSで公開されていることがわかった。これはインパクトが大きい。

この大地震によって、地図関係の大きな動きとしては、OpenStreetMapの活発な活動が挙げられる。OpenStreetMapは参加型で地図を作成するプロジェクトである。今回のハイチの大地震により、世界各地の人々から、あらゆる情報を使い、ハイチの地図の作成が行われている。当初は、Landsatなどの中解像度の衛星画像が活用されていたのだが、とうとう商業用の高解像度衛星画像が活用されるようになった。

これらの衛星画像は、これまで紹介してきた国際的に標準的な地図画像のやりとりの方式あるWMS(Web Mapping Service)が利用されているのだ。これによって、公開するだけでOpenStreetMapで活用できるようになったのである。もちろん、WMSなので、Google EarthやQuantum GISなどの他のクライアントでも表示可能である。Quantum GISでのWMSの利用方法 はこちら、Google EarthでのWMSの利用はこちらを参照されたい。

WMSの情報は、WikiProject Haitiに示されている。以下に各衛星画像のCapabilitiesのURLを示す。

・DigitalGlobe
http://maps.geography.uc.edu/cgi-bin/mapserv?map=/home/cgn/public_html/maps/mapfiles/haiti.map&version=1.1.0&SERVICE=WMS&REQUEST=GetCapabilities
地震前と後の写真がある。ただし、地震後の写真は白黒のようだ。

・Geoeye
http://maps.nypl.org/relief/maps/wms/32?request=GetCapabilities
地震後のカラー写真がある。

これらの写真を使い、被害調査が行われている。写真で判読であるため、制約があることは否めないが、倒れた建物、倒れそうな建物、通れない建物、倒壊した橋などもマッピングされている。また、国連の要請で、難民キャンプを求められているらしい。(リンク

OpenStreerMapにログインし、ハイチの画像を見ると、情報がどんどん追加されているのがわかる。

最新の情報なのかわからないが、OpenStreetMapのWMSが公開されており、そこで追加されている情報を見ることができる。

OSM WMS Service
http://vizure.net/support/blog/item/1-osm-wms-service

上記のWMSのCapabilities
http://data1.vizure.net/server/services/osm.xml

このような規模で、参加型によって、衛星画像を活用して災害調査が行われた事例は、はじめてではないだろうか。これを実現できたのは、WMSなどの相互運用技術が広まってきたからである。

インド洋の大津波の際は、高解像度衛星画像によって、津波の様子や渦を撮影し、そのインパクトが世界に伝わった。5年が経過し、今度は見るだけでなく、衛星画像を使うところまで、到達したといえる。非常に感慨深いものがある。衛星画像の利用の新しいパラダイムシフトが起きた瞬間かもしれない。

ハイチ地震の全容が次第に明らかになってきている。それと同時に、衛星観測によるデータが出てきている。1月14日夜の時点で確認できているのが、日本のJAXAのALOS(だいち)、アメリカの商用衛星Geoeyeの画像である。色々な面で違いが分かりやすいので紹介する。

1. ALOS(だいち)

陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるハイチ地震にともなう緊急観測
http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/img_up/jdis_av2_haiti_100114.htm

一部の拡大画像が紹介されている。2時期の画像の比較から、被害が起きたところは白くなっているということらしい。上記のデータが国際災害チャーターへ利用されている。

国際災害チャーター
http://www.disasterscharter.org/activation_details

衛星写真地図が公開されている。ただし、高解像度版の画像は公開されていないらしい。

だいちは、AVNIR-2の10m解像度による観測である。ポインティング角度が-26度なので、直下視しか撮影できないPRISM(白黒画像だが2.5m解像度と高解像度)との同時撮影はできない。そのため、擬似的に高解像度の衛星画像(パンシャープン画像)が作成できない。

また、被害が起きたところは白くなっているということだが、ポインティング角度が大きいことと(反射角度)、比季節が異なる点(太陽高度角)から、白イコール被害箇所という解釈は慎重になる必要があるかもしれない。ただし、一般的には倒壊箇所は白っぽくなるといわれている(屋根が崩壊せずに倒壊した場合は、白っぽくならないため、判読が難しい場合がある)。

2. Geoeye

Haiti imagery layer now available
http://google-latlong.blogspot.com/2010/01/haiti-imagery-layer-now-available.html

以前からGeoeyeとGoogleは連携が密である。それを利用して、GoogleがGeoeyeの衛星画像が閲覧できるKMLファイルを公開した。このファイルをGoogle Earthに表示させ、被災前の高解像度衛星画像との比較もできるようになっている。

この写真の解像度は、画像の圧縮が影響していて判断できないが、1mから数mのオーダーの解像度ではないだろうか。撮影範囲はかなり広い。判読してみると、建物ごとに倒壊の度合いが分かる。しかし、上から見ているために、崩壊しているのか判別しづらい部分もある。

3.考察

JAXAのだいちは、国際チャーターで一番早く画像を提供したが、画像ファイルであり、しかも解像度なりの詳細さをもった閲覧ができない。一方、GoogleとGeoeyeでは、Geoeyeが撮影した衛星写真をGoogle Earthという世界的に有名なソフトウェアにより、地理情報として、その写真が持つ解像度なりの表示を実現し、世界中の人が被災状況を見ることができる機会を提供した。

だいちとGeoeyeには衛星センサとしての差は歴然としている。これはGeoeyeの方が新しいわけで仕方ない。とはいえ、衛星画像の品質が全く同じだったと仮定しても、どちらが使える衛星写真を提供しているといえるだろうか?


個人の考えであるが、災害等の緊急時においては、だいちの画像は、圧縮せずに地図と重なる形式(つまり地理空間情報)で公開するべきである。つまり、以前から当Blogで取り上げているようなWMS(Web Mapping Service)による公開を行うべきである。そうすることで、衛星画像にアクセスできる人が増え、衛星画像が役に立つデータとなる可能性がある。なお、WMS形式はGoogle Earthにも表示できる。

誰がユーザーかによって、公開方法は異なるだろう。しかし、衛星画像は地図であり、たくさんの人と共有すべきデータに近い。これからは、衛星センサのみを見るのではなく、どう衛星画像を使われるのかを考え、現在の情報技術に対応した衛星画像の情報流通のデザインを考えていく必要があるだろう。

阪神淡路大震災から15年ということもあり、地震関係の話題をよく目にする。流行もので大変恐縮だが、Twitterに代表されるソーシャルメディアが地震防災研究に貢献できる可能性について考えてみたいと思う。ここで「地震防災研究」としているのは、実際に地震防災に役に立つ手段なのかが明らかにされておらず、有効性を評価するための研究が必要だからである。しかし、以下の2つの項目に記した文章から分かるように、研究ができる下地は整っており、地震防災研究へ貢献できる可能性は十分にあるといえる。


・地震予知の研究にソーシャルメディアは使える?

毎日新聞のサイトで以下のような記事を発見した。

地震:異常現象を予知に生かそう 関西の産学が本腰(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20100106k0000e040069000c.html

空が赤く光るといった地震前の非日常的現象の情報を集め、地震予知に生かそうという取り組みが今月から始まる。科学では分からない「未科学」の部分を解き明かそうという試みで、「関西サイエンス・フォーラム」(会長=秋山喜久・関西電力相談役)が計画した。京都大や大阪大などの地震や気象、生物等の研究者約30人が参加、一般からの情報も募る。

国は、このようなタイプの研究は行わない立場であるが、大学などの研究機関がこういう研究を行うことは意義がある。「未科学」という言葉が新鮮である。さて、この研究を意味のあるものにするためには、異常現象である可能性がある情報を数多く収集することである。当然のことながら、モバイル端末や携帯電話による一般からの情報は、重要なウェイトを占めるだろう。

こういうものこそTwitterのようなソーシャルメディアが活用できる。タグ付けして写真を撮影するなり文章を、簡単な住所と共にTweetすればよい。iPhoneならTwitterクライアントであれば、自動的に位置情報をつけることもできる。大きな地震がいつ起きるか分からないため、情報を募る期間が読めないという問題点はあるが、上記の方式で情報を収集するコストは、プラットフォームができているので、ほとんどかからないため、やってみる価値はあるのではないだろうか。


・被害などの情報の集約にソーシャルメディアは使える?

アメリカでは、USGS(地質調査所)が、Twitterで地震の情報を収集できるかどうか研究を行っているというニュースを発見した。

アメリカ地質調査所,ツイッターを活用した地震情報収集システムを実験(メディア・パブ)
http://zen.seesaa.net/article/137775957.html

アメリカ地質調査所はこれまでも世界各地で頻発している地震を速報しており,RSSフィードでも時系列で配信している。世界中の限りあるセンサーからのデータをもとに地震発生地を検知していた。ところがこのTED( Twitter Earthquake Detection)では,これまで違って人によるコメントや写真などの情報が地球上のあらゆる場所から集められる。 "earthquake"とか"tremor"のようなキーワードを含むツイートを収集していけば,膨大な情報が集まるようになるだろう。2008年7月の南カリフォルニア地方で起こった地震では,携帯電話の通話が滞ることがあったが,SMSやモバイルアプリ経由のツイッターがかなり使われたという。緊急時のコミュニケーションツールとしてもツイッターは定着していきそうだ。

報道機関や行政機関などは、被害の迅速な把握が必要だが、ソーシャルメディアによって蓄積される情報が役に立つ可能性がある。ノイズが多いことが予想されるが、位置情報が付与され、地震に関するキーワードで検索するなり、決められた(どのように決めるのかは課題)ハッシュタグを付けることで、必要な情報を抽出できる可能性が高い。

大地震が発生すると通信網が遮断される可能性があるため、このような仕組みがうまく働くのかは未知数である。ただ、前述したように、このような可能性を明らかにするための研究にかかる費用は、すでにTwitterなどのプラットフォームはできているため、少なくて済むのである。大きな地震は発生して欲しくないのだが、大地震のような大規模災害が発生した際には、ソーシャルメディアの可能性および有効性を評価してみたいと思ったりしている。

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